フォトニック結晶導波路と高密度光集積回路


光回路の配線の役割を担うのが導波路である.しかし普通の導波路は光閉じこめが弱いため,急激な曲げや分岐があると,光が導波路の外へ飛び出してしまう.この点が光集積回路の実現を難しくしていた.この問題を解決するのが,MITJoannopoulosらにより提案されたフォトニック結晶導波路である.

フォトニック結晶はあらゆる方向を向く光を反射するフォトニックバンドギャップという性質がある.したがって導波路をフォトニック結晶で囲めば,曲げや分岐でも光は外へ飛び出さずに伝わる.ただしこの導波路はきわめて高度の技術を必要とするため,実験の成功例はなかった.1999年,本研究室では薄膜にフォトニック結晶を作り込む方法を確立し,実際に光伝搬を観測することに世界で初めて成功した.2000年にはLSI用に量産されているSOIウエハを利用した導波路の製作にも成功.その後,多くの機関で理論的な理解が進み,低損失で光を伝搬させる設計方針が明確になった.現在,最先端の実験成果を発表しているNTTでは,X線リソグラフィを用いて4インチウエハ全面にパターンを形成し,低損失伝搬や光がゆっくり進む現象(低群速度)を実証している.

  

 

左からSOI基板上に製作した導波路の表面写真,俯瞰写真,直線導波路の光伝搬の様子(波長は1590nm).


1998年度〜 深谷,米倉,2000年度〜茂木